平成20年2月13日に、札幌市の食堂で住み込みで働いていた知的障がいのある方々が13~31年間、無報酬での劣悪稼動や年金搾取されていた事件が報道されていました。
障害者自立支援法施行後、障がいのある方の雇用に特化した施策が多くなっています。ハローワークや独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構でも、各種助成金や雇用支援プログラムを新たに出してきています。
生活保護世帯の就労支援が重要な自立支援事業と位置づけられる中、障がいがある為に稼動しづらい生活保護世帯への具体的支援も検討されています。
このような流れもあり、丁度、障がいのある方の雇用実態を調べていた中での報道でした。
制度運用のあり方、監視体制のあり方など多くの問題を抱えた事件ですが、それ以前に、互いに敬い、敬愛することが出来ない関係を悲しく感じます。
登別市において必要な社会福祉事業は何かを考えてきましたが、まず一番必要なのは「社会福祉の心づくり」かもしれません。
少し長くなってしまいますが、障がいのある方の権利侵害に関して、先月参加した「成年後見・権利擁護セミナー」(主催・主管:北海道社会福祉協議会 札幌市社会福祉協議会)での講演のメモを一部紹介します。
「障がいのある人が地域で安全に暮らしていくために何が必要か」
<プロテクション・アンド・アドボカシー大阪 弁護士 辻川圭乃 氏> 
辻川氏自身が自閉症の息子をもつ境遇から、障害者の権利擁護を中心とした活動を展開。特に消費生活における、障がい者の権利擁護についての講演。
被害者のプライバシーに配慮しているためか報道数は少ないが、障がい者が各種詐欺行為の被害に遭うケースが増えている。
リフォーム詐欺:軽度認知症の女性が5200万円のリフォーム費の請求を受ける。裁判により、判断力不足に乗じた販売として、不法と判断された。
布団販売詐欺 :一回使用したらクーリングオフ出来ないとして払い戻しを拒否。裁判事例ではクーリングオフが可能。
展示販売詐欺 :聴覚障がい者に対し、手話が出来る販売員を利用して安心感を与え、高額販売する。
なりすまし詐欺:NTT社員を装う。隣がデジタル電話を導入するので、ついでに無料で機材交換すると持ちかけ、 デジタル電話を高額でレンタルする。
免許証偽造 :運転免許取得率の低い障がい者をねらって個人情報(住所・生年月日等)を郵便物などから取得し、なりすましで原付免許証を取得。免許所を身分証明として、サラ金による借金を繰り返す。
窃盗手伝い :記憶力に優れた自閉症者を騙した上で、窃盗を手伝わせる。例えば、一瞬の時間で車のシリアルナンバーを憶えさせて作った複製キーで、自動車窃盗を繰り返す等。
その他、知的障がいを原因とした冤罪事件や年金搾取事件などの事例がいくつも紹介されました。
辻川氏は知的障がい者を対象に、クーリングオフの手続き、訪問販売員への断り方などについて、ロールプレイ・模擬体験を用いた訓練を行なう活動をされています。
一般社会では約2%がIQ70以下と言われていますが、刑務所での受刑者の2割以上がIQ70以下というデータもあり、知的障がい者が触法行為に巻き込まれる可能性が高くなっています。併せて、警察・検察が知的障がい者に対して理解不足であると、辻川氏は指摘されていました。