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登別市議会議員 辻󠄀ひろし

世代間不公平

政府による 「経済財政諮問会議」において、来年度予算の編成に向けて、社会保障費の「自然増」にムダがないか見直しを厳格化する方針が発表されました。要は、社会保障費の効率化・抑制を行う方針を示したことになります。

おそらく、次年度予算要求が明らかになってくるに従い、「社会保障費の抑制=ケシカラン」との声が聞こえてきそうですが、実際のところはどうなのでしょうか?

気になって、最近「社会保障亡国論(鈴木亘 著)」という本を読み返してみました。この本によると、ニュースで良く取り上げられる、社会保障関係費年間1兆円ずつの増加という表現について、実際には保険料負担を含めると年間3~4兆円の増加を続けていると理解した方が良いそうです。

    社会保障亡国論

そのための消費税増税とは言えども、実際には消費税による税収増は増税時の効果しかなく、年々積み上げで増えていく社会保障関係費の負担増には十分に対応できません。その点において、社会保障費の効率化・抑制を行う方針を、予算要求前に示したことは、私としては共感できます。

一方で、社会保障費の危機的財政状況や制度破綻の状況については、十分に説明が行われていないのか、報道の関心事にはなり得ていない実情が感じられます。

試算では、現状の社会保障給付を維持するためには、2050年には消費税30%、国民所得に占める社会保険料・税負担は70%必要になるそうです。年金制度設立当初の保険料は、当時4.6%の保険料に対し、現在は17.1%に増加。社会保障全体の世代間損得勘定では、1940年生まれと2010年生まれの差額は8580万円にもなり、大きな世代間不公平を生み出しています。よく聴くフレーズに「世代間の支え合い」というのがありますが、実際には「支え合い」など存在していません。

今後、支給開始年齢の引上げや、相続税の見直しなど関係制度の改変に踏み込む論議が始まらなければ、子ども達の世代へと大きな借金を残すことは確実な状況です。

社会保障費の効率化や抑制に向けた動きが活発化するに従い、大きな批判を呼び起こしてしまうことが容易に想像されますが、この「世代間不公平の解消」は、社会保障制度を考える上で、とても重要な視点になってくるのではないでしょうか。