先日、自殺対策基本条例制定に向けて第2回ワーキンググループを開催しました。

今回は、登別市担当職員にも参加いただき、これまでの自殺対策や今後の展開について情報提供していただきました。また、当市の自殺者の実情や、新自殺総合対策大綱の内容、各自治体で制定されている条例比較表についてメンバーに共有し、様々なご意見をいただきました。
登別市では、ここ3年間は10名程度の自殺者数で推移しています。この数が、多いのか少ないのかについて、メンバーより疑問が提議されました。
5万人程度の登別市人口に対しての自殺者データですから、他自治体や広域行政単位と比較するのに、「自殺率」など共通指標を用いても、分母(登別市人口)の少なさからデータがどうしても乱高下しやすくなってしまいます。このことから、市民や行政に自殺対策の必要性について理解を求めるに、10名の自殺者数は十分な指標にはなっていないのではないかとの趣旨意見もありました。
そもそも、自殺者が社会的タブー視されている中で、実態そのものが正確にデータに表れてきづらい問題もあります。メンバーの意見を受けた私なりの理解としては、自殺者にかかわる各種データは「傾向」を見るには有効ですが、必ずしも「実態」を把握するには十分でないようです。
私自身、客観的な理解を求めるあまり、データ分析に重きをおきすぎる傾向にあったかもしれません。ここで改めて条例制定を目指した目的や趣旨を鑑みるに、自殺者「数」の多少そのものが主要な問題ではないことを思い起こされました。
安楽死の議論とは異なり、「自殺」の多くは追い込まれた末の選択であり、社会的な課題として解決することが可能が問題です。
例えば、交通死亡事故に対しては交通安全運動(予防活動)からはじまり、改善に向けたインフラ・技術整備が行われ(治療)、残された家族への補償(遺族支援)が行われています。それだけ、社会的な関心と理解の高さが背景にあることから、交通死亡事故者数の多少について、その傾向が重視されることはあっても、少ないからといって各種施策が中断されることはありません。
条例制定に向けては改めて、自殺の責任や問題が、必ずしも本人に帰来するものではなく、“誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現”により「救える命」であることを念頭に考えていきたいと思います。